Pluto

夜明けを

Bulimia

私の歯はどんどん削られていく
可哀想な歯
せっかく母さんが時間とお金をかけて
ちいさい頃から丈夫に、と
守ってきてくれたのに
今じゃ小さな虫食い
醜いクレーター
これは腐ったりんごと同じ
今に大きく成っていく
そのスピードを加速することを
助けているのは
他でもない私自身

だって辞められないの
よくないと分かっていながら
だって止まらないの
食べることだけが私の安心
いつしか気づけばそんな風に
成ってしまっていた

ぽっかり空いた心の穴
スースーするよ
夢も希望もあるのに
信じる気持ちが足りなくて
それさえあれば
嵌るピース
私の歯車もう一度
回転して
私を約束の地に連れて行ってくれる
そんな気がするのよ


私の肌はどんどん荒れていく
可哀想な身体
せっかく母さんが大事に
時間とお金と
あと愛情をかけて育ててくれたのに
今じゃきっと内臓も
荒れ放題 生理も止まっちゃった

でも辞められないの
浮き上がってきた肋骨
でも止められないの
嬉しくなっちゃう
腰骨だってほらこんなに
いっそ気持ち悪いくらい

ぜんぶぜんぶ
吐きだしてしまおう
どうせお前たちには分かりゃしないんだ
そうだよ、私はひとでなし
フリーク アスペ
なんでも言えばいい
その位置からならなんだって口にできる

くさいものには蓋をせよ
見たくないものは箱に閉じ込めて
目を逸らして生きていけ
こころは硬く檻の中
感じるこころは罪悪だ
いいも悪いも関係無い
時間とお金
それが全て
うまく生きられない者は脱落者
淘汰せよ!淘汰せよ!
どうだ、我々こそが正しい
見ろ、負け犬が泣いてるぞ
可笑しいなぁ!可笑しいなぁ!
弱者は喰われろ、強者が絶対
負けたお前がわるいんだ
悔しいなら、這い上がってみろ
どうだ、ここまで来てみろよ!

私の時間はどんどん削られていく
可哀想なもうひとりの私
せっかく今日も生き延びたのに
せっかくまだ生かされているのに
影で消えていった命が泣いている
肉にも骨にもなれずに
ただ流れていった
私が重ねた罪はいくつ?
それでもあなたは私に言うの?
死んではいけない、
生きろ、と

ぽっかり空いた心の穴
スースーするよ
暇な外野は今日も揚げ足取りに夢中で
いつだって嫌らしい眼を光らせ
舌舐めずりして牙を覗かしている
それでもそう、あなたは言うの
死んではいけない、
生きろ、

信じる気持ち
あと少しの勇気
それさえあれば
もう一度まわる歯車
もう一度
歩いて
私の脚
私を約束の地に連れて行って
あなたが待つその場所へ

遅いものなんて本当はなに一つない
すべてが惰性を許すためのいい訳だった
あいつらが何を言ってきたって構いはしない
信念なき者の罵声
志を忘れた人間の嫉みは
ただの雑音だ
大して私と代わりゃしないよ

見ろ、その瞳はまるで
死んだ魚か、
或いはハイエナのそれみたいじゃないか

淘汰されてたまるか
お前に、私に
私は問う
お前は誰だ、
私は誰
その命もう一度
息を吹き込んで
風が吹く
馬鹿にしていた種が咲く
開いた花は枯れていく
それでもそこにこそ
きみの栄光がある


動け、もう一度
私の心
響け、今度こそ
きみの耳に
もう一度、何度でも

無価値なんて言わせない
無意味なんて言わせない

いつか心から言いたいよ、

生まれてきてくれて、
ありがとう