Pluto

夜明けを

WILL

いつだって二つに一つの選択だった。

両方手に入れられることは滅多にない。確率でいえばきっと1%にも満たないんじゃないかな。

でも時折いっぺんにすべてを得てしまう人も居て、その鮮やかさに目を丸くする僕に、彼は親切にも教えてくれたよ。なんとも愉快な調子で、要は見方の問題、コツはここだよ、ともう一度見せてくれた。いとも簡単にやってのけてしまうその姿に、やっぱりはてなを飛ばしてばかりいると、「自由とはつまりそういうことなのだ」、と穏やかな、しかしはっきり、きっぱりとした口調で彼は言った。

悲しい思いをしても、そのままでいることも滅多にない。ただ、頭の上に何か煙みたいなものがぷかぷか浮かんで、ぼんやりした状態が続く。或いはその理由も釈然としないまま、ただ眼球の奥の方で涙が溢れて、気がつくと瞼の裏側のどこかが腫れていたりする。行方不明の感情は色褪せたブルーをしていて、なんだかそれはいつぞやのきみの影に滲んで見えたものと、よく似ているように思えた。

真空パックされた夜空の下、凍える静寂にただ響くものといえば時間のたてる足音くらいで、だから心臓のポンプから聞こえてくる大音量のそれが怖くて、ひたすら目を瞑っていた。そうしたら、いつの間にか朝が来ていた。なんて、こんなことはよくある話だよね。

ひっきりなしにおしゃべりを続けるあの星々が僕の気持ちまでうっかりバラしたりしないように、しっかりと目を光らしておこうと近視の双眼を叱りつければ、今度はめがねに愛想をつかれる始末さ。

踏んだり蹴ったりのほとほと疲れた帰り道、ふと見上げるとのんきな具合で北極星がくるくる回っていた。大方、今晩パーティーでも行われるのだろう。そういえば今日はあの星座の超新星の日だった。生き死には本当に派手だね。激しく爆発したかと思えば、次の瞬間、また新たな無数の光を飛ばして、ある時は嘗ての自分の姿よりも大きな惑星になってる時だってあるのだから。

ぽっかりうかんだあのひつじと一緒にどこか遠くまで飛んでいきたい。バックパーカーならぬフライングショートトリッパー、なんてどうだろう。


レンズをむけたその先には泣きそうに歪むあの子が映った。シャッターを切らなかったこと、何度も思うことはあったけれど今では、そのほうが良かったのかと、納得していたりもするんだよ。