Pluto

夜明けを

ラヴレター

愛しているの言い方すら下手くそだった私を

それでも愛おしそうに見つめていた

あなたの瞳がこわくて

 


愛が何かも分からなかった私は

ただ侵食されていくように感じる気持ち悪さから逃げるしかなく

ただひたすら逃げるしかなく

だってこのまま

もしも溺れてしまったら

このふやけたような、

どこかずっと

触られたくないような場所に手を当てられているような

 


そんなココロ、

私のなかにはないし、

はいってこないで、と

そう、ただひたすら

 


呼べばいまも来るかもしれない

でも今更こわいのだ

あなたの顔を見ること

あなたと改めて向き合うことが

記憶があれば充分と思っていた

だって思い出はその為にあるのだから

それなのにまったくちがった

少なくともいまは

全然足りない

思い出じゃたりない

今すぐ会いたくてはなしをしたくて

ただ瞳を合わせてそこにいることを

ふたりの距離

その空気に触れて

知りたかっただけ

 


あなたはただぽっかりあいたまま

お互いの生命だけが流れている

その場所に

足を踏み出して

私の様子を見ながら

対して私は後退

それを見て

泣きそうなほど優しい顔で微笑むあなたの

本当は泣いている瞳に馬鹿みたいに心が軋んで

そのまま

くるりと向きを変え

あなたに背をむけ

はしりさった

 


今でも馬鹿みたいに思う

もしもあの場所にまだ

あの日のあなたが立っていたなら

そこから動けなくて

立ち竦んだままでいたら

動けない理由が私にあったら

私は今の私は

上手くそこに辿り着いて

こっちだよ、と

あなたの腕を引くことができるだろうか

 


情けない顔で笑っているでしょう

これで大人の顔をしているの

オトナになんてなりたくない

本当はそんな役はほっぽりだして

いつでも子供の私に戻れる

そうできることも知っているのにね

 


自由なあなたが大好きでした

大人のくせにオトナになりきれず

それをわかったうえで、それでも

今日を生きようとする

私が毎度の不安に駆られるとき

無責任に

大丈夫だよ、と

笑って背中を叩いてくれる

その軽やかな力強さ

白く骨ばった手

上下する私にはない喉仏

そこから生まれるあなたの声

その全てが本当は

本当に心の底から大好きでした

 


もう伝わらない

それでもきっと届いていると信じてる

人間、生命

生者と死者

みんなどこかで繋がっている

だから呼べば応えるし

いつだってお前のところに

いっせーのーせ、で

ワープしていくよ

無理でしょと

ひとしきりお互いに笑った後

それでもやるよ

真面目に微笑み

そう言ってくれたのも

あなただったから

 


あなたが今日もどこかで生きている

それだけでもう私は充分力になる

一日一日

大切に日々を生きて生きましょう

丁寧に

いつだって今は永遠じゃない

それを初めに感じさせてくれた

あなたに

いつかまた逢えたとき

今度は親愛のハグを

叶えられるように