Pluto

夜明けを

joieux

クリスマスツリーは想い出の結晶だ
飾られたあのボールは
みんなの願いのあらわれ

あの一つ一つ、みんなの中に
誰かの願いを内包している
だからあんなにきらきらと
倖せそうに
輝いて見えるんだ

あなたが横顔でそう口にした時
一体どんな顔をして言ったか
それをあなたは決して
知ることはないでしょう
だから取り敢えず、
わたしがあなたを忘れる
その日までは
わたしの胸の裡で
そっと閉まって
大事に秘めておきます

このシーズンがまたやってきた
サンタに願い事を託せる子供たちはいいね
その可愛い夢から
すでに目覚めてしまった私たちは
だからこそ、今日
せめてもの想いを抱え
ここに来たのです

電飾の魔法

空を背にクジラが飛んでいく
星々が掻き混ぜられる
風が吹く
胎で耳にしていた
歌が響く

聖夜だ、聖夜だと
天使たちが頭上で歌い
ラッパを吹く
星を頼りにやってきた
三人の博士と羊飼い
そのなかにじつは
わたしが居たんだよ、って
言ったら
あなたは信じる?

人の明かりも、
はるか昔に生まれた光も
夜に点るものは
なぜこうもあたたかく映るのだろう
あるいは、いつから
そんなことを感じるようになったのかな

記憶をめぐらす
静かに生まれてきた
わたしたちの幼子

この惑星は
実は子供で溢れている
大人になりきれない
こどもたちで溢れている
ほらこのめがねをかけてみて
ね、
その面の下
子供の彼が見えるでしょう?

私たちは大人になりきれぬうちに
大人と呼ばれるようになる
上手に生きられないまま、
子供よりも下手なリズムで
それぞれのステップを踏む

それでも当たり前の明日は
決して当たり前ではないから
寒い朝がその訪れを知らせるまで
瞳を瞑り
深い夢を望む

シャッターが切られる
出来損ないの心はいびつで
だからほほえむ顔も
ほら、やっぱり

だけど、それでも
あなたの瞳に映る自分は
そんなに悪くない気がしているのです
これはあなたがいなければ
けっして味わうことの出来なかったこと

クリスマスの朝はお天気でした
これはきっと
枕元の魔法が解けてしまった
わたしたちへの
神さまからのプレゼントだ
だから今日はたくさん笑おう
たくさん遊んでたくさん忘れない夢を見よう

そして今夜のフィナーレに
わたしたちの光を空にあげよう
いつか誰かの心をあたためて、
あるいは繋いでくれますように

今日の内に、どうしても
あなたに伝えたかった

おめでとう、
生まれてきてくれて
ありがとう

わたしと同じ時代、
同じ世界のどこかで
今日も生きてくれていて
本当にありがとう

いつか逢いましょう
絶対に
この世界の何処かで

gifted

あなたが誰かの姿を借りて
わたしの前に立つとき
その人の輪郭が朧げに
光ってみえること、
きっと気づいているのはわたしだけ

あなたが誰かの姿を借りて
その想いを伝えようとするとき
その人の声が
微かに柔らかく響くこと、
きっと気づいているのはわたしだけ

目を閉じた時に誰を想う
もしも今夜夢のなかで
ひとり
必ず逢えると約束されるなら
あなたは誰を選ぶ

あなたが嫌う呼称を敢えて
わたしは口にしよう


かみさま、
神さま


今日、ほんのすこしだけ勇気をください

寒いと震えるあの人に蝋燭の灯を
凍えて眠れないあの子に暖かな毛布を
プレゼントを待ち望む彼にはそれを
何も要らないから、とママの快復を祈った
あの少女には奇跡を


大人になったら忘れてしまった
いいえ、本当は憶えている
目覚めた時のわくわくした感情
枕元にそっと置かれた確かな愛情

あなたがもしも知らないと言うのなら
この手の平から伝えられたらいい
熱は言葉に
記憶は支えに

どうか、受け取ってほしい
ささやかな祈り
どうか思い出してほしい
その音が一体どんなものだったのか

今夜だけ、もしかしたら
私にも使えるかもしれない魔法
それは決して醒めることがなく
消えることもない

言えなかったごめんねを言おう
届かなかった愛を語ろう
叶わなかった夢に息を吹き込み
新たな蕾を一緒に待ち望もう


現実はおとぎ話とは違うけれど、
今夜だけは騙されてみよう
感受したこころの欲望
それは確かに、あなたの象をしていた

聞きたかったのは、なんでもない
ただあなたから響く
素晴らしき、あなたの歌声

7のおはなし

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7は私の最強の数なの
7は私のお守り
7はあなたの象徴
だからつまり、
7はあなたのことなの

13はだめって話もあるけれど
私はあまり気にしていない
だってそうしたら
3だって15だって
本当は糾弾されるべき
でもそんな話、あなたは知っている?

私は聞いたことないよ

これは数の話じゃないよ
全部あなたのおはなし
あなたと私のささいなおはなし
あなたが生まれて
私が生まれた
ただ単純にそういうの
そういう話をしているの


8はあなたの大事な数字
8はあなたの無敵の呪文
あなたには復活
私には愛情
どちらにしても無限のシルシ

あなたな光の王様、
私は一匹の羊
いなくなったらいつでも
あなたは探して
見つけ出してくれる
私がどんな場所にいて
どこに隠れていたとしても

これは数の話じゃないよ
全部あなたのおはなし
あなたと私のありふれた
生命のおはなし
彼が生まれて
彼女が生まれた
そうして繰り返し
引き継がれてきたもの

そろそろ本のページをめくって
飽きたら破って棄ててもいい
でも肝心なことは心に留めておいて
覚えていてね、私がいたこと
あなたの歩んだ軌跡
彼らの抱えた原罪と代償

天国の扉を開いて
私がそちらに着いたら
どうか一番に私を迎えにきて
その両腕でしっかり
私を抱いて

聞こえていた
感じていた
あなたの視線
音のない愛しているの声
再び器を脱いだ
私の魂を抱いて
その燃える炎で
あたためて

あなたの象をとった
永遠不変の想いで
私を貫いて
そして私の耳元で囁いて
あらゆる音の中で
一番大好きなあなたの声で聴きたい

その息に
ないはずの私の心臓が震える
そうして
あなたから吹き込まれた私の魂は
今度こそ、
あなたのもとで
永遠不滅の命を得るのです

 

 

i

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だれかが愛してくれるとおもっていた

だけどそれはゆめでしかなかった


自分を愛せないやつは
ひとがどれほど愛を傾けてくれても
その愛を本当の意味で受け取ることはできない
その愛が本当の音をもって響くことがない
なぜなら自分のことを愛せないと宣っておきながら
そのくせ自分のことが一番に可愛いと思っているからだ
その心には自分しか映らない
故につまるところ
折角のぞんだものが傍にあるときでも
手にすることがかなわない
気づいたときは手遅れ
それはよくある話
かえって其方の方が

現実っぽい


だれかが愛してくれたらと思っていた
私の愛せないあなたを
ほかの誰かが倖せにしてくれたら
まるで示しあわせたかのように
巡りあって想いあって
互いを大切に

たとえどれほど間を縮め
密に寄り添おうと努めても
ひとは彼に定められたひとつのみちしか
歩めぬということ

いつかスパンも読めぬ
別れや終わりの日が必ず
おとずれることを
痛いほど知っていようとも

どうか怯えないで
目を逸らさないで
諦めないで
生きて

 

耐えるということ

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悲しいことがあったのね
瞳を見れば分かるわ
話す必要はないよ
話したいとき
いつでも聞くから

この世にはどうしようもないことが
いっぱいあるね
その程度は人それぞれだけど
それは比べるものじゃない

 比べられるものじゃないんだよ

 

揺れる光
怯えて彷徨うように
それでも何かを必死に抱え
守ろうとしている

 

這うように

この宇宙を生きている

銀河の片隅の惑星、そのまたちいさな

ちいさな青い球体のなかで

とりあえず毎日

毎日密やかな息を吐いて

命を紡いでいる

 

そう、あなたしかいない
その魂を守れるのは

だからこそこんなに脆い器でも
日々、闇雲に訪れる嵐のなか
倒れるわけにはいかないの

そうやって燃えている灯りが
今のあなたに見えているかしら

 

悲しいことがあったのね
瞳を見れば分かるわ
隠さなくてもいいよ
見られたくないなら
見ないから

この世には通じあわぬ言葉の
なんと多いことでしょう
形は違えど想いは同じ
そんな事だってざらなのに
たかが一語、
その不在、その欠如の
なんと大きなことか

 

許す心がなければ
きっと、いまここに居ない
とっくにあなたと殺しあいをして
そして静かに死んでいただろう

真っ赤な血を見るとき、いつも思う
もしもここに、想いの全てが
含まれているのならば

あなたと私を繋ぐ
そう、例えば臍の緒が切られても
一度築かれた糸がなくなることは
決してない

黒く固まった血を見るとき、いつも思う
もしここに、私の想いの全てを
託せるのならば

あなたと私を繋いで
そう、例えば永遠に刻まれてしまった
過去のように
生々しく
純性を保ったまま
このメッセージを、
正しい形で
置いていくことができるのに

Bulimia

私の歯はどんどん削られていく
可哀想な歯
せっかく母さんが時間とお金をかけて
ちいさい頃から丈夫に、と
守ってきてくれたのに
今じゃ小さな虫食い
醜いクレーター
これは腐ったりんごと同じ
今に大きく成っていく
そのスピードを加速することを
助けているのは
他でもない私自身

だって辞められないの
よくないと分かっていながら
だって止まらないの
食べることだけが私の安心
いつしか気づけばそんな風に
成ってしまっていた

ぽっかり空いた心の穴
スースーするよ
夢も希望もあるのに
信じる気持ちが足りなくて
それさえあれば
嵌るピース
私の歯車もう一度
回転して
私を約束の地に連れて行ってくれる
そんな気がするのよ


私の肌はどんどん荒れていく
可哀想な身体
せっかく母さんが大事に
時間とお金と
あと愛情をかけて育ててくれたのに
今じゃきっと内臓も
荒れ放題 生理も止まっちゃった

でも辞められないの
浮き上がってきた肋骨
でも止められないの
嬉しくなっちゃう
腰骨だってほらこんなに
いっそ気持ち悪いくらい

ぜんぶぜんぶ
吐きだしてしまおう
どうせお前たちには分かりゃしないんだ
そうだよ、私はひとでなし
フリーク アスペ
なんでも言えばいい
その位置からならなんだって口にできる

くさいものには蓋をせよ
見たくないものは箱に閉じ込めて
目を逸らして生きていけ
こころは硬く檻の中
感じるこころは罪悪だ
いいも悪いも関係無い
時間とお金
それが全て
うまく生きられない者は脱落者
淘汰せよ!淘汰せよ!
どうだ、我々こそが正しい
見ろ、負け犬が泣いてるぞ
可笑しいなぁ!可笑しいなぁ!
弱者は喰われろ、強者が絶対
負けたお前がわるいんだ
悔しいなら、這い上がってみろ
どうだ、ここまで来てみろよ!

私の時間はどんどん削られていく
可哀想なもうひとりの私
せっかく今日も生き延びたのに
せっかくまだ生かされているのに
影で消えていった命が泣いている
肉にも骨にもなれずに
ただ流れていった
私が重ねた罪はいくつ?
それでもあなたは私に言うの?
死んではいけない、
生きろ、と

ぽっかり空いた心の穴
スースーするよ
暇な外野は今日も揚げ足取りに夢中で
いつだって嫌らしい眼を光らせ
舌舐めずりして牙を覗かしている
それでもそう、あなたは言うの
死んではいけない、
生きろ、

信じる気持ち
あと少しの勇気
それさえあれば
もう一度まわる歯車
もう一度
歩いて
私の脚
私を約束の地に連れて行って
あなたが待つその場所へ

遅いものなんて本当はなに一つない
すべてが惰性を許すためのいい訳だった
あいつらが何を言ってきたって構いはしない
信念なき者の罵声
志を忘れた人間の嫉みは
ただの雑音だ
大して私と代わりゃしないよ

見ろ、その瞳はまるで
死んだ魚か、
或いはハイエナのそれみたいじゃないか

淘汰されてたまるか
お前に、私に
私は問う
お前は誰だ、
私は誰
その命もう一度
息を吹き込んで
風が吹く
馬鹿にしていた種が咲く
開いた花は枯れていく
それでもそこにこそ
きみの栄光がある


動け、もう一度
私の心
響け、今度こそ
きみの耳に
もう一度、何度でも

無価値なんて言わせない
無意味なんて言わせない

いつか心から言いたいよ、

生まれてきてくれて、
ありがとう